titleホームに戻る
北海道新聞に掲載された随筆
「スロー登山」
  「藻岩山に登らない?」久しぶりに札幌に行った私は、妹に声をかけた。
  「この暑いのに!」妹は驚いている。お盆が過ぎ八月も終ろうとしているのに、今年は暑い日が続いている。
  「考えがあるの。夕方、涼しくなってから登って、夜景を見てからロープウエーで降りるというのは、どお?」
  少女のころ、二歳違いだけれど体格の劣る私は、いつも妹とささいなことでけんかしては、負かされていた。時を経て、最近は登山という共通の趣味を持ち、年に一、二回は二人で山に登り、小太りという悩みも共有する仲良し姉妹だ。
  ところが今年は、二人に中高年という「年齢の暗雲」が立ち込め始めた。まず私が冬の雪道で足首をくじいた。妹は普段もひざが痛いと言う。
  「もう、高い山は無理だね」などと話をしていたら、新聞で「スロー登山」の文字を発見した。
  自然を楽しみながら、マイペースで。これだわー。これからはこれでいいのだ。
  私の誘いに手稲山の下に住む妹は、「今日は快晴だから、手稲山が夕焼けに映えて、藻岩山からの夜景はきれいだと思う」と乗ってきた。
  午後四時、登山開始。道ばたの草花のかれんさに感嘆し、じっくり観察する。足取りが速くなれば「ゆっくりね」と声をかけ合う。それでも、日が暮れるまでに十分余裕の頂上到達。やがて手稲山の夕焼け。札幌市街の夜景は、宝石箱のようだった。
  お得な気分になれた、スロー登山でした。
title
戻るtitle