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「この雨はいい雨だ。明日はキノコが出るぞ。」朝、夫の目覚めの第一声。 結婚して初めての秋。私の母に連れられて落葉キノコ採りに行った夫は、楽しさのあまり、そのとりこになった。 私が子供のころは、士別の街の中に住んでいたが、車に頼らずとも、少し歩いたら近くの山でキノコが採れた。大きなかごにいっぱいのキノコ。ムシロを広げ、母は半日がかりで下ごしらえし、塩漬けする。夕食にはキノコのみそ汁。汁が見えないほどキノコがいっぱいだった。 結婚後、私の作るキノコのみそ汁はキノコが多すぎ、「汁ではなくまるでおかずだ」と夫には不評だが、「汁の中でキノコが泳ぐようなものは、キノコ汁ではない」と私は譲らない。 近くに住む次兄もそうらしい。兄嫁が笑って言っていた。私のきようだいにとっては、これが母の味なのだろう。 翌日、朝露に濡れた夫が落葉キノコをかごいっぱい採ってきた。「これをばあちゃんに食べさせて・・」という夫のすすめで、私は札幌の母の元へ。 十三年も病院生活で、すっかり足のなえた母は、数年前から寝たきりとなってしまった。食べることだけが楽しみの母に、今年もキノコ汁を届ける。平素の親不孝をわびながら。これだけは食べてもらいたくて。 毎年思うことは「来年は食べてもらえるかな?」今年も喜んで食べてもらえた。良かった。来年、母は九十才。来年も届けるから待っていてね。
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