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北海道新聞に掲載された随筆
「嫁ぐ娘に」
  二十四歳の娘が五月に結婚することになった。
  健やかな成長を願い、毎年飾ったひな人形は、娘が大学生になり、ふるさとを後にしてからは、お内裏さまとおひなさまだけを箱から出していた。それが、今年は久しぶりに全員そろってのお出ましとなった。
  木目込みの七段飾り。地味だけれど年を経て、わが家にはすっかりなじんだ顔である。
  「ひな祭りだから帰って来なさい」
  夫は、札幌で勤めている娘を呼び寄せた。娘は仕事の合間をぬってあわただしく帰郷、一泊だけして戻って行った。
  そして、それを大切にしまう日。娘が幼いころ、よくこう言っていたのを思い出した。「早くしまってね、お嫁に行けないと困るから」。娘の希望がかなえられたのか、白馬の王子さまは意外と早く現れた。
  ひな人形をしまいながら、随分と傷んだ箱があるのに気付いた。「そうだ、箱をお化粧して、人形をお嫁入りに持たせよう」
  神奈川県に嫁ぐ娘は、「着物はいらない。家具は二人でそろえる」と、親に出番を与えてくれない。
  奮闘すること数日。下張りし、花模様の和紙を張った頑丈そうな箱が出来上がった。
  娘よ、この箱にはおひなさまと幸せをびっしり詰めるのだよ。
  でも、「部屋が狭くて飾るところがないから邪魔」って言われるかな。
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